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ゆれる [オダギリジョー]

ゆれる 2006年

ゆれる

ゆれる

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • 発売日: 2007/02/23
  • メディア: DVD

 

 

 

西川美和監督
オダギリジョー(弟、猛役)
香川照之(兄、稔役)                                                    伊武雅刀(父役)                                                                 真木よう子(幼馴染役)                                                              木村裕一(検事役)                                                                 新井浩文(アルバイト店員役)

地方に残り父の営むガソリンスタンドをついでいる真面目な兄、稔と東京でカメラマンでうまくやっている弟、猛。母の一周忌で弟の猛が帰郷する。すぐに激高する父と稔はうまくやっているが、猛は父とうまくいっていない。猛は帰郷しても、安心出来るのは、兄と仲が良い事。母の形見分けの中から蓮見渓谷のフィルムを見つけて、幼馴染の智恵ちゃんと3人で渓谷に行く事になる。兄と智恵ちゃんは同じガソリンスタンドで家族の様に働いているが、弟、猛が東京に出る前から智恵ちゃんは猛の事が好きなのだ。一緒に東京に出て行けば良かったと思っているのだ。猛と出会った事で智恵子の兄、稔に対する態度が一変してしまう。そして、事件が起こる。つり橋から智恵子が転落するのだ。

まず、女の姉妹だったら、起こり得ない事件だと思った。私は長女で妹がいる。けれど、智恵子が男だとして考えた時に私だったら、つり橋は渡らなかった。仮に妹があの立場でも、私の妹はあのつり橋を渡らないだろう。

全ての嫌な事を背負わされている兄。誰の目から見てもあきらかに不平等な兄と弟だ。

裁判になり、いつもチャラチャラしている弟がしっかりしていく。まともな事を言う。父ともうまくやっていく。  この事件をきっかけに兄は弟と自分の置かれた立場の不平等さに直面し、自分の心に対して、投げやりにも見えるが、素直になっていく。兄が弟に言う言葉が印象的だ。「おまえがいつも言ってることじゃん」や「初めから人を疑って、最後まで一度も信じようとしないのがおまえだよ、猛」だ。この時にカメラがゆれるのだ。ドキドキするシーンだった。活造りの死んだ魚の目と何もかも投げ出したお兄ちゃんの死んだ目が重なった映像が印象的だ。

ラストシーンは衝撃的だ。
みんなはどの様に捉えたのだろうか?私はみんなと違う捉え方をしているのかもしれない。でも、あのラストシーンがどちらだったとしても、兄からしたらどちらでも良いんだと思う。

オダギリジョーの苦虫をつぶした様なやりきれない顔が印象的。
香川照之の演技はなんともいえない辛く、耐えられない気持ちにさせられる。                                             始めの方で弟の猛が母の一周忌に来る前に父が営むガソリンスタンドに寄るシーンがある。そこで、猛は智恵子と会うが、猛はサングラスをかけて、智恵子に声を掛けない。智恵子は猛かもしれないと思い車の窓を叩こうとするがやめてしまう。猛の車のミラーに映る智恵子が寂しそうで、悲しそうで、確かなものがなさそうで、その真木よう子の表情はせつない。智恵子が橋から転落する前に弟の猛に言う。「失敗しちゃいけない、失敗しちゃいけない、って思っているうちに何もない人生になっちゃった。」女なら、誰もが思う事だ。失敗しないで、誰にも文句を言わせないまともな生活をするか、失敗を怖がらずにやりたい事をして、智恵子の言うところの人生がつまらないものにならないかだ。                                                     裁判のシーンでは「それでもボクはやっていない」を見たせいか、「こんな風には裁判は進まないんだよな?」と、思いながら見てしまったが、兄が検事側にとって、不利な証言をするとイヤーな顔をする検事役の木村裕一の演技はなかなか良かった。「GO」で朝鮮人の高校生役をやっていた新井浩文もきっかけになるシーンを演じていて、成長ぶりを思わせる。

それにしても、兄弟の事を思い出させる作品だ。                                            私の妹は子どもの頃メガネをかけていて、近所の子どもたちに「メガネ、メガネ」と、からかわれて泣いて帰って来た事がある。私はその妹をからかった近所の子ども達を全員集めて、新聞紙を丸めて頭を叩いてやったのを思い出した。そんな風に兄弟との思い出を思い出させる映画だ。                                                                      それでも、やっぱり、男の兄弟がみたら、かなり、やるせない映画だと思う。

この映画はオダギリジョーの出演しているドラマや映画全ての中で一番いい作品だと思う。
先日、オダギリジョーが「東京タワーが代表作と言われてしまうだろうが、それは仕方のない事だ」と、雑誌のインタビューで答えていた。それはそうだろうとも思うが、オダギリジョーの代表作が「ゆれる」だと言っても過言ではないと思う。


「ゆれる」はDVDで2度みてしまった。前回、一気に見る事が出来なかったからだ。今日、もう一度、見直した。でも、郵便局や宅配が来たり、ネコが喧嘩して帰ってきたりして、やっぱり、一気には見られなかった。今年に入ってから、三茶の映画館で1ヶ月くらいやっていた。でも、三茶の映画館はあまりきれいではないので、ゴキブリが怖くて、見に行けなかった。でも、「ゆれる」は映画館で監禁されて、一気に見るべき映画だったなと、思った。

兄弟という普遍的なテーマだ。

HP:http://www.yureru.com/splash.html


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コメント 18

ken

オダジョーにとって「ゆれる」は2006年までの集大成。
「東京タワー」は決して代表作にはならないと思います。
なんたって本人が嫌ってる(笑)。
真木よう子、良かったですねえ。僕はファンになりました。
それと、ラストシーン。
僕は兄の狂気を感じました。
by ken (2007-05-01 02:14) 

ルースターズ

ステキな作品でした。

代表作とかの括りはいらんのではないかと思います。
浅野忠信のように。
興行に恵まれるのが全てじゃないですからね(笑

東京タワーは、興行も感情も約束されたもの。
演技の幅は、そこからのスタートになりますからね・・・・。
その役者の本質とは少し変わるような気もします。

それでも、ボクが「オダギリジョー」で良かったと。
そう思います。

そしてこの弟も。
香川照之はちと規格外の素晴らしさでしたが(笑
by ルースターズ (2007-05-01 08:08) 

さえ

なんだかドキドキしそうな作品ですね。奥が深そうだ・・・
是非見てみたいと思います!
by さえ (2007-05-01 19:27) 

ミック

kenさんへ
真木よう子良かったですよね。
切ない表情にはやられました^^!
それにとてもキレイでした。
ラストシーンはそれぞれ色々な解釈をしますね。
時間が経ったら、自分自身ですら、違う解釈をしそうです。
by ミック (2007-05-01 20:20) 

ミック

ルースターズさんへ
私も東京タワーのボクがオダギリジョーで良かったと、思いました。それと、この弟の役は他の役者さんではなくて、良かったと思います。香川照之は役によって、ホントに全く違った人になる。そんな香川照之の兄の演技は少し怖かったです。TBありがとうございます^^!
by ミック (2007-05-01 20:30) 

ミック

さえさんへ
ラストからの一時間は驚く事が起こります。そして、みんなが違った解釈をしそうな、ラストシーン。丁寧な脚本で、いい作品でした。おススメです^^!
by ミック (2007-05-01 20:33) 

カオリン

これは映画館で観るべきですね。
何で見逃しちゃったんだろう??
家でDVDだと絶対に集中できないと思う。
「フラガール」みたいに再上映してくれないかな?
ミックさんの映画評、「観たい!」って気にさせてくれますね。
オダギリジョーさん、映画に出まくってますね。
幅広い役柄をされていて、すごい俳優さんになりつつあると思います。
by カオリン (2007-05-01 23:34) 

ミック

カオリンさんへ
オダギリジョーが出ている映画やドラマの事を書く時は気合が入っちゃって、なかなか、まとまりませんへへ;
家でDVDだと、集中できないですよね。この映画は特に見逃しちゃいけないシーンだらけでしたから、映画館で見るべきでした。ゴキブリ怖さに映画館に行かなかったのは今でも後悔です。オダギリジョーはこれから、映画やドラマから少しずつ手を引いて、若い俳優さんにいい映画を譲る気持ちでいるそうです。雑誌で読んで、ちょっと、寂しい気持ちになりました。
初めから監督志望だったので、仕方ないんですけども、ちょっと、残念。
フラガールみたいに再上映してほしい^^!
by ミック (2007-05-02 00:06) 

RangerMaeda

興味が沸くね
見て見たいなぁ^^
by RangerMaeda (2007-05-02 16:58) 

ミック

Rangerさんへ
集中して見た方が面白いですよ~^^
by ミック (2007-05-02 22:01) 

ミック

ひいらさんへ
niceありがとうございました!
by ミック (2007-05-02 23:03) 

ジジョ

こんにちは(^-^)
この映画、映画館で観ましたが終わった後は、
場内がどんよりとした空気に包まれていましたw
わたしは「妹」なので、痛い思いで観てしまいました。。
TBさせていただきますね☆
by ジジョ (2007-05-07 01:02) 

ミック

ジジョさんへ
映画館はそんな状態になっていましたか。
ジジョさんのお姉様もおやさしかったので、
きっと、痛い思いがされたのだと思います。
TBありがとうございます^^!
私もTBさせて下さいネ^^!
by ミック (2007-05-07 21:03) 

みちる

ゆれる・・私も、見て感動・・いや違う
何か心を揺さぶるものを感じました。
オダギリジョーはもちろん!良かったのですが
兄の心情、香川照之の演技は演技を超えて
すごいものを感じましたよ~

内容的にとても気に入ったので
映画を見てすぐに
「蛇イチゴ」をレンタルで見ました。
私監督の感性がとても好きです
by みちる (2007-05-10 22:13) 

ミック

piglet-yさんへ
かなり、心を揺さぶられましたよねー。
ホント、香川照之の演技は狂気のような、すごいものが
ありましたよね。
今、「蛇いちご」は渋谷の映画館でやっているのですよね。
見に行こうか、どうしようか、ゆれています^^!
by ミック (2007-05-11 00:03) 

miyuco

いい映画でした。緊張しながら観ました^^;
ラストシーン、兄がバスに乗るか乗らないか
私もどっちでもいいと思います。
兄が弟を取り戻した瞬間のように感じました。
香川照之とオダギリジョーの二人は
ホントに素晴らしかったですね。
若き監督西川美和さんが何よりスゴイですけど。
by miyuco (2007-05-29 14:19) 

ミック

miyucoさんへ
一度目に見た時は兄が弟を見捨てた様に見え、
兄が怖くみえました。
二度目に見た時には弟の行動はひどい様に見えて、
実は兄がただの兄に戻る過程だった様に思え、
二人の間に橋は最初からラストまでも架かっていたのだと、
思えました。
この映画はホント、緊張しますね。
まるで、壊れかけたつり橋の上にいる様な緊張感でした。
結局、「蛇いちご」は映画館で見ていないのですが、
いい作品を作る監督だと思いました。
香川照之の狂気のような演技、惚れ惚れです。
TBありがとうございます!
by ミック (2007-05-29 23:59) 

わ、わたしもオダジョー好きです。
デビュー当時のお顔が見たくて仮面ライダーのビデオ借りたことがあります(笑)
”ゆれる”知りませんでした ><
今日レンタルにGOします!!
by (2007-07-20 09:23) 

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